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58話 本当の笑顔

Penulis: ニゲル
last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-30 16:31:31

「まずい……早く生人の所に!!」

私達はふわりと浮いたキュアリンに続き来た道を引き返そうとする。

「あれ? こっちはなんとかなったの?」

テレパシーを飛ばそうとしたが、それとほぼ同時にズタボロの生人君が現れる。全身血がべっとりついており、服はほぼ形状を保っておらずほぼ裸だ。局部はギリギリ布の切れ端を縛って隠しているが、そこ以外は全て露出している。

「生人君!? 大丈夫だったの!?」

「なんとかね……逃しちゃったけど。テレパシーで連絡取ろうと思ったんだけど、戦闘中だったら邪魔になると思って急いで走ってたんだ」

「それより生人さんのその傷……まさか三人のイクテュスに?」

奴が言ったことが嘘でなければ生人君は奴以上の敵三人を相手にしていたはず。この傷つき具合も納得だ。

「そこの灰になってるのに聞いたんだね。うん、そうだよ。凄い強かった。こっちが泥試合みたく、こんな風になるまでしぶとく戦わなきゃいけないくらいには」

走りながら再生してもこの傷だ。きっと壮絶な戦いだったのだろう。

「でもリンカルも逃がせたし、キュアリンも間に合ったみたいだし、とりあえずは一件落着ってことかな?」

流石に疲れたのか生人君はその場に座り込み傷の再生に専念する。

「リンカルも無事なのか……ほっ……」

橙子さんも一安心し変身を解除する。私達もいつまでも気張っているわけにもいかないので変身を解き呼吸を整える。

「だが新しく分かったことは多いがその分謎も増えた。知能のあるイクテュス……これは上に報告しとかないとな」

前の段階では人間がイクテュスの力を取り込んだとも解釈できた。だが今回で確定した。知能のあるイクテュスが人に化けて潜伏していると。

状況は好転しているようで更に悪化しているのかもしれない。

「もしかしたら今までのイクテュスも……」

橙子さんがポロッと独り言を漏らす。生人君の話によれば、人間態からイクテュスになる際に注射器で緑色の液体を注入したらしい。

生き物にその注射を刺して知能のないイクテュスを作っていた。

そう考えるのは自然で違和感はない。自然発生ではなく計画犯だった。恐らく目的は混乱に乗じた作戦の遂行か、実験といったところだろう。

「まぁでもやることは変わらねぇだろ? 人を襲うイクテュスが居たら片っ端からぶちのめす。だろ?
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